逆境に強い人弱い人、何が違うの?【久瑠あさ美メンタルトレーニング】
久瑠あさ美の「コロナ禍以後をいかに生きるか」Vol.2
◾️逆境への抗体を自分の中にいかに早く作れるか
鈴木)——自分と向き合う、ちょうど良い時間になっている感じはしますよね。
久瑠)——「不安」というのは、自分でどうにもできない瞬間にやってきます。これは言いかえると「逆境」という瞬間ですよね。
上手くいってたことが上手くいかなくなる。どうやらダメそうだ。先行きが読めない。自分でどうにもならない。そういった不自由さや不確実性を目の当たりにすると、とかく「自分を守ろう」という本能が働いて、不安になる。
だからネガティブな状況に対してうずくまり、逃げる習性を人は持っているんです。これ自体は決して悪いものではない。
でも、その時に本当に試されているのは、「でも何かできるんじゃないか」「何かしていこう」と何かする人間になれるかどうかです。何もしないでいることが、いかに罪なのか。いかに無意識の中の悪、悪意なき悪なのか。多くの人はそれを理解せず、ただ不安になるだけです。
逆境に対して、単にそこに溺れて身を委ね、諦めてしまうのではなくて、そこから抵抗する力を、人間は潜在的に持っています。ウイルスに対する抗体と同じで、逆境への抗体を自分の中にいかに早く作れるかが問われるのです。
この先の状況は、一旦は崩壊に向かう可能性もあります。喩えるなら飛行機で言えば墜落する可能性が、株価で言えば暴落する可能性がある。でも、そこからV字回復できる可能性はあるわけで、たとえV字回復できるようなタイミングがやってこないなら、そこでいかに水平線をキープし、次の機に備えることができるか。
あくまで絶体絶命の逆境をイメージしてのお話ですが、そういった急降下からのリカバリーマインドについては、私はよく塾生に向けて「諦めるのではなく、明(あか)らめる」ことが大切と伝えています。
「絶体に無理!」という瞬間に諦めるのではなく、明らかにしていくことが重要である。つまり、いま自分に何が課されているのかを「明らめて」、それにすぐさま取り組むこと。それが人間の潜在的な力、リカバリー力を自ずと引き出すからです。それがマインドの法則なのです。
誰もが諦めてしまうタイミングになっても、これまでにその潜在的な力を磨いてきた人は不安定な状況に対してやっぱり強いですし、そこを「サボってたな」と思うのであれば、いまのこのタイミングをきっかけにしてマイナスだったものをゼロに、さらに1を10にしていくことのできる逆境マインドを創り上げていく。
それがいま突きつけられている、そして誰もが取り組んでいける課題です。
私たちはこれまで、そのような潜在的な力、逆境に対するリカバリー力を養う機会を人生の中で得ることが、難しい状況に置かれていました。
たとえばトップアスリートが戦っているのは、潜在能力を発揮しハイパフォーマンスを出すことを求められる次元です。潜在能力で、相手の予想もできないプレーをした選手が勝利する想定外を競い合う次元です。
それに対して、オファーされた仕事をそつなくこなすことを求められる、想定内でこなす次元においては、「ハイパフォーマンスは人生の中には要らないです」と言われて生活しているようなものなのです。
しかし最近は毎日の中でも、「感動を創っていく」とか「人に喜ばれる仕事」といった観点での挑戦に注目が向いています。ここ近年の日本の社会にゆとりが生まれて安定化していたこともあって、「ちょっとジャンプしてみようかな」「チャレンジしてみようかな」と思う人が増えていったのだと思います。そうした風潮においてコロナ渦、全く別次元に立たされた我々の、社会が、マインドが、どうこの壁を突破していくのか。それがいま、新たに試されているのだと感じています。
(構成・動画制作/甲斐荘秀生)
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